高知県内で芸術文化活動や福祉・教育活動などで活躍する個人・団体に対して、事業の金銭助成を行なっています。助成申請の受け付けは年2回。1月と7月の下旬、高知新聞紙面に募集広告を掲載します。申請書はこのホームページからダウンロードできます。また、当事業団でもお渡しできます。お問い合わせください。
芸術文化や厚生福祉を支援 金銭助成事業
2024年度春の助成【6団体】
La forêt
幅広い世代に芸術を
香美市土佐山田町新改の「La forêt(ラフォレ)」は、県立美術館ホールで舞台芸術などを手がけていた山浦日紗子さん(42)が退職後、2020年に立ち上げた。培った人脈を生かして国内外からアーティストを高知に招き、演劇などの舞台を企画・運営している。
今年7月には、インドネシアの現代人形劇カンパニーと、香川・豊島に拠点を置く夫婦ユニットによる共同公演を県内で予定。映像機器や楽器で魅せる公演は、客席をステージ上に設けるという。
これまで一人芝居や和紙、コウゾをテーマにした舞台など、多彩な企画を実現した。ワークショップもたびたび開催。参加者は海外アーティストと地域を散策したり、絵画や染色に取り組んだりして、芸術を身近に感じてきた。
「目指すのは、子どもも大人も一緒に考えて楽しめる空間づくり」と山浦さん。ラ・フォレはフランス語で「森」。いろんな人や芸術が集まる森のような集合体に―。そんな思いを込めた活動は、高知に芸術の新風を吹き込んでいる。
(福井里実)
次回公演に向けて打ち合わせをする山浦日紗子さん(左)=高知市朝倉丁の「Equivalent」
このは助産院
医師に学ぶ思春期性教育
高知市一宮東町5丁目で「このは助産院」を営む細川真利さん(54)が、同じ開業助産師の谷泰子さん(55)と結成したグループ「土佐姉妹」。親子で参加できる体験型の性教育講座を各地で開き、命の大切さを伝えている。
さまざまな年齢の子どもと接する中で、特に思春期の子の対応に課題を感じてきた。二次性徴に伴う体の変化に戸惑うものの、どこに相談や受診をすればいいか分からない、との声を多く聞くからだ。
そこで今夏、県内の産婦人科医とタイアップした講座を企画。講義の後、親子の疑問に医師が答えるスタイルとし、不安の解消につなげる。医師を身近に感じ受診のハードルを低くしたいとの狙いもある。
講座には、子どもから相談を受ける機会が多い養護教諭や保健体育の教諭にも参加してもらいたいという。2人は「体と心が変化する思春期の不安は大きい。周りの大人にも正しい知識を得てもらい、適切なサポートにつながれば」と話している。
(石丸静香)
親子向けの性教育講座を開く細川真利さん=左=と谷泰子さん=右(高知市内)
NPO法人・佐川町さくらスポーツクラブ
温かな合唱 人の心包む
毎週火曜日、佐川町甲の町総合文化センターに明るい歌声が響く。NPO法人佐川町さくらスポーツクラブが母体の「さくら・シニア合唱団」は、地元の高齢者施設や町内外の音楽イベントなどで温かなハーモニーを届けている。
2008年発足。当初のメンバーは児童だったが、少子化を受けて14年から入団対象を大人に拡大。現在は50~70代の14人が、ピアノの生演奏に合わせて歌に磨きをかける。
レパートリーは童謡やアニメソングで、年5回ほどの公演をこなす。同法人理事長の志手清晴さん(79)は「発足時より発表の場が増え、知名度も上がってきた。人に聞いてもらえると皆、練習に力が入る」。
現在は4月に四万十町で開かれる音楽イベントに向け、「となりのトトロ」や童謡「緑のそよ風」といった曲の練習に励む。
「みんなと楽しく歌うことで日頃のストレスも忘れられる。小中学生にも参加してもらい、童謡を後世に歌い継ぎたい」と志手さん。優しい歌声は、これからも人々の心を温かく包み込む。
(乙井康弘)
公演に向けて歌に磨きをかける「さくら・シニア合唱団」のメンバー(佐川町甲の町総合文化センター)
保育の父・佐竹音次郎に学ぶ会
生誕160年 伝記出版へ
四万十市竹島出身で、明治から昭和にかけて5千人以上の子どもを育てたとされる保育事業家、佐竹音次郎(1864~1940年)。彼の業績を後世に伝えようと、市民有志が熱心に活動している。
2015年に発足した「保育の父・佐竹音次郎に学ぶ会」。約130人のメンバーらは「辞世の句碑」など、竹島に点在する音次郎ゆかりの地に案内板を設置。直筆の日誌をデータ化し、複製本を作って同市や県に寄贈している。
音次郎生誕160年に当たる今年は、個人として約20年間顕彰活動を続けてきた同会会長の中平菊美さん(73)=同市具同=が執筆した「感動を共に! 私の佐竹音次郎伝」を自費出版する予定。元竹島小学校校長の中平さんが、地元目線で等身大の音次郎像について記している。
同会は5月の総会で伝記をお披露目する予定で、幡多地域の小中学校への配布も検討している。中平さんは「過去に書きためてきた研究をまとめた。音次郎の生き方を広く知ってほしい」と話している。
(芝野祐輔)
「佐竹音次郎の生き方を広く知ってほしい」と話す学ぶ会のメンバー(四万十市竹島の下田地区竹島防災コミュニティセンター)
「ビキニデーin高知2024」実行委員会
全国の反核学び連帯を
1954年3月1日に、米国が太平洋マーシャル諸島のビキニ環礁で実施した水爆実験。被災の歴史を風化させまいと、3年前から「ビキニデーin高知」を高知市や室戸市、幡多地域で開いている。
4回目の今年は県内の動きを発信するだけでなく、全国の反核運動を学び合い、連帯することを目指す。
これまでは被ばくしたマグロ漁船の元船員の体験談や、救済を求める高知地裁での訴訟など、県内の状況を広めることに主眼を置いてきた。
5月11、12日に高知市内で開く今回は「核問題に携わる人がつながる場にしよう」と、全国から専門家を招いてシンポジウムを開く。
東京地裁でのビキニ訴訟で原告代理人を務める内藤雅義弁護士をはじめ、被ばく問題に詳しい大学教授や福島、静岡の医師が、各地での活動や核廃絶に向けた道のりを語る予定だ。
実行委員会の浜田郁夫事務局長(64)は「参加した人が核問題を自分たちの問題として考えられるような集会にしたい」と意気込んでいる。
(仙頭達也)
4回目の開催に向けて話し合う実行委員会のメンバー(高知市丸ノ内2丁目の高知城ホール)
「ビキニの海のねがい」を伝える会
核のない未来願って
米国が太平洋のマーシャル諸島・ビキニ環礁で行った水爆実験から今年で70年。被ばくした県内の漁船員らが苦しんできた事実を広く伝えようと、当時の船員や遺族の様子を描いた絵や写真を展示する企画展が5月に開かれる。
主催するのが県内の元教員ら11人でつくる「『ビキニの海のねがい』を伝える会」(高知市)。企画展の会場には、紙芝居や今年3月に発刊した本の原画になった油絵11点に加え、中心メンバーの岡村啓佐(けいすけ)さん(72)が記録してきた船員らの肖像写真とそれぞれの証言約40点を並べる。
「写真のリアルな表情や語りに、迫力ある原画。親子でしっかり学べる内容になっている」とメンバーたち。展示作品からは、放射能で汚染された船上の暮らしや遺族の悲痛な叫びがひしひしと伝わる。
企画展は5月3~11日、高知市立自由民権記念館で開催(7日休館)。森田敏江代表(69)は「一人でも多くの人に70年前の事実を知ってもらい、核のない未来を願いたい」と話している。
(浜田悠伽)
ビキニ事件を伝える絵や写真を手にするメンバー(高知市丸ノ内2丁目の高知城ホール)
※文・写真とも高知新聞社提供