高知県内で芸術文化活動や福祉・教育活動などで活躍する個人・団体に対して、事業の金銭助成を行なっています。助成申請の受け付けは年2回。1月と7月の下旬、高知新聞紙面に募集広告を掲載します。申請書はこのホームページからダウンロードできます。また、当事業団でもお渡しできます。お問い合わせください。
芸術文化や厚生福祉を支援 金銭助成事業
2024年度春の助成【12団体】
西山花守交遊会
バイカオウレン群生地へ
早春の山肌に雪が降ったかのように可憐(かれん)に咲く小さな小さな白い花。佐川町西山地区の里山を、牧野富太郎博士が愛したバイカオウレンの群生地にしようと、住民団体「西山花守交遊会」が種をまいたり遊歩道をつくったりして整備に励んでいる。
昨年5月発足で、町内外の約20人が活動。里山の約1ヘクタールには会が育て、保護するバイカオウレンやユキモチソウ、セリバオウレンなど約20種類の植物を見ることができる。町内では珍しいツチトリモチも自生している。
最近では口コミなどで少しずつ注目を集めるように。会のメンバーが里山をガイドする日もあり、昨年12月~今年2月には計300人以上の植物愛好家らが訪れたという。
今後、里山の麓にある休憩所に植物の写真や資料を展示する予定。篠原速都会長(64)は「植物に関心を持ってもらえる場所にして交流をつくっていきたい」と意気込んでいる。
(乙井康弘)
バイカオウレンの群生地を目指して整備に汗を流す西山花守交遊会のメンバー(佐川町西山組)
高知保護区保護司会
中学生の熱い思い記録に
高知市内の中学生が家庭や学校で抱える悩みや将来の夢、社会問題などをテーマに発表する弁論大会が今年30回目を迎える。社会を明るくする運動の一環で主催してきた「高知保護区保護司会」(尾崎盛裕会長)は、これまでの歩みを振り返る記念誌の発行を準備している。
同会には現在131人の保護司が在籍し、罪を犯した人の立ち直りをサポート。“地域のおじちゃん、おばちゃん”として青少年の健全育成にも力を注いできた。
多感な時期を過ごす中学生が、家庭の事情や友人関係の悩み、ジェンダー不平等などへの思いをありのままの言葉で堂々と語る。時に緊張でうまく話せなくなる子もいるが、伝えきろうと頑張る姿が感動を呼んできた。笹方一正事務局長(73)は「多くの学校の生徒に参加してもらって記念大会を成功させ、30回で語られた熱い思いを記録に残したい」と発行への意気込みを語る。
(伊野部重智)
中学生弁論大会の記念誌発行に向けて話し合うメンバー(高知市塩田町の更生保護サポートセンターこうち)
高知コーラス合笑団
被災地の思い 歌に乗せ
お街の飲み屋街の路地に、青いネオン看板の文字が光る。「高知コーラス合笑団 練習場」。毎週土曜日の夜が稽古日。「あまりに楽しそうだったから」と歌声につられ、酔いどれ人が入ってくることも。「そのまま団員になっちゃった人もいます」。団長の北村幹雄さん(73)は笑う。
「その名の通り高知で、笑顔で、歌い続けてきました」という市民合唱団は、今年で創立70周年。11月の第63回定期公演では演目の一つとして、10年ぶりに組曲「瓦礫(がれき)の街から」を歌う。阪神大震災の体験を詠んだ同名の短歌集を題材に、創立メンバーの故村田忠雄さんが、震災の悲惨さを伝えるだけでなく、明日への糧になるように、と創作した。
能登半島地震があった今年。「被災地の思いを皆で共有したい」―。合笑団が長年、大切にしてきた創作曲を、20~80代の40人の団員たちが心を込めて歌い上げる。
(久保俊典)
11月の定期公演に向け、歌の稽古に励む団員たち(高知市本町3丁目の練習場)
県自閉症協会
子育て世代に発信を
始まりは1972年に発足した「県自閉症児親の会」。現在のように子どもを預けられる場所はなく、「親が家でわが子を見ていた」という時代から勉強会や療育キャンプを開き、関係機関には支援を訴えてきた。
この50年余りで発達障害は広く知られ、支援法も施行された。自閉症は「自閉スペクトラム症」と呼ばれるように。「今当たり前にある支援は、先輩たちの頑張りでつくられた」と平野三代子会長(69)は語る。
会員は現在、177人。子どもの年齢は5~61歳と幅広いが、高齢化が進む。今の子育て世代に活動を知ってもらい、正確な情報収集にも役立ててもらおうと、ホームページのリニューアルを計画した。
現在は保護者の交流をメインに、年代ごとや全体での座談会を開いている。「私も同じ境遇の親同士で話し、元気をもらってきた」と平野会長。若い世代に合わせた発信で、リアルなつながりを守っていく。
(門田朋三)
「自閉症児の親が会って話せる場を続けていきたい」と話す会員たち(高知市朝倉戊の県立ふくし交流プラザ)
アジア文化交流会
日中友好を深めたい
アジア文化交流会は土佐清水市加久見で不動産業を営む立田大城代表(65)が「貧しくて学校に通えない子どもたちを支援したい」と1994年に立ち上げた。NPO法人化した99年には中国・雲南省を初訪問。子どもたちの歌に触れ、「初めて聞くはずなのに何度も聞いたような懐かしさ」を覚えたという。
以来、主に中国との交流が続き、延べ40回以上渡航。寄付金や自らの私財を投じるなどし、2001~05年には雲南省に計5校の小学校を建設した。02年からは同会が唐人駄場近くに整備した「和平公園」に、中国人留学生と共に桜の植樹も続けている。
県内留学生らとの「日中友好の集い」は94回を数え、延べ約4400人が参加。10月には設立30年を記念した「集い」を同市で開く。何かとぎくしゃくする日中関係。「だからこそ草の根で相手の顔が見える交流を続けることが大切」と立田代表は話している。
(山下正晃)
アジア文化交流会のメンバー(土佐清水市の中央公民館)
高知プリマ会
世代関係なく交流を
「高知プリマ会」の60~70代のメンバー5人は、毎週火曜には高知市の春野公民館平和分館に集まる。バーを握って基本の動きや、片足を真っすぐ後ろに伸ばす「アラベスク」など、にぎやかにバレエに取り組む。誰でも無理せず挑戦できるよう、いずれも優しくアレンジしているという。
代表の森木朱美さん(61)がバレエを始めたのは30代後半。経験者のママ友に誘われて教室に行き、「回ったり跳んだり。きれいに体を動かす人」に憧れた。練習を続ける中で生活にメリハリも生まれた。バレエの喜びを広めたいと、2022年に会を立ち上げた。
今年12月には、同市高見町の住民が集う地域サロン「ほっと笑(しょう)」のクリスマス会に出演する。NBAバレエ団所属のプロ、鍵仲いづみさんと一緒に「ドン・キホーテ」を舞い、体験教室も開く。森木さんは「世代に関係なく、バレエで交流しましょう」と呼びかけている。
(小谷暁)
バーレッスンをする高知プリマ会のメンバー(高知市春野町の春野公民館平和分館)
高知香南ジュニアオーケストラ
節目の定演 音色生き生き
バイオリンやチェロ、ビオラやコントラバスの元気で美しい音色が響く。「高知香南ジュニアオーケストラ」(武内恵子代表)は、香南市を拠点に約90人で活動する。
4歳から高校3年生までが所属し、演奏歴は初心者から10年以上とさまざま。弦楽器のみ扱い、気軽に参加できるよう楽器は貸し出しする。2007年には初心者のクラスも新設した。優しく指導を行う先輩たちは年少者の憧れ。和気あいあいと週1回の練習を続け、市内外の音楽イベントや介護施設などで演奏している。
25年3月には20回目の定期演奏会を開催する。節目を記念して今回はプロとして活動するOB、OGも集結し、定番の「アンパンマンマーチ」や「ドレミの歌」のほか、おはこの「フィドル・ファドル」など約15曲を披露する予定。メンバーは「生き生きとした音色を楽しんでほしい」と練習に励んでいる。
(浜田悠伽)
弦楽器で元気なハーモニーを奏でるメンバー(香南市野市町西野ののいちふれあいセンター)
劇団 the・創
ビキニ事件を舞台化
高知市の劇団「the・創(ざっそう)」は、牧野富太郎をはじめ、高知が輩出した偉人の物語を上演してきた。新作のテーマは、1954年に米国が太平洋マーシャル諸島で水爆実験を行った「ビキニ事件」。演劇化には難しい題材だが、代表の西森良子さん(75)が「高知の演劇人がこの事実に目を背けていいのか」という、強い思いで脚本を書き上げた。
4年前、本県漁船の被ばくを掘り起こした「幡多高校生ゼミナール」顧問、山下正寿さん(79)から「演劇にしてくれんかね?」と依頼されたのがきっかけ。劇ではその高校生が船員から証言を聞くシーンを描く。
劇団員は市内の教員や会社員ら10人。団員に中学生らを加えた総勢約30人が出演する予定だ。ビキニ事件から70年がたち、風化も言われる。西森さんは「事件を知ってほしい。平和じゃないといかん」と訴える。11月30日に県立美術館ホール(同市高須)で行う上演に向け、稽古は熱を帯びる。
(仙頭達也)
舞台本番に向け台本読みをする劇団のメンバーら(高知市鴨部の市西部健康福祉センター)
トサシカケNITARI
住民喜ばせるイベントを
土佐市で活動するNPO法人「トサシカケNITARI」。2018年の発足以降、高齢者向けダンス教室、芸術作品展、専門家による講演会など多様な催しを、2、3カ月に1回ペースで市民らに提供している。
活性化策を「仕掛ける」の意味と、同市沖に多いニタリクジラから命名した。30~40代が中心の約30人で構成し、コアメンバーがそれぞれの得意分野を生かして企画を練る。芸術家ならアート展、農業者なら田んぼでのどろんこ大会、舞台プロデューサーなら映画上映会やコンサート―といった具合。
12月は高岡商店街で「とさ冬祭り しだれ桜と陶芸と野点(のだて)」を計画。野だてを全国展開する美術家を招き、参加者が絵付けした茶わんをその場で焼き上げるなどの内容で、商店街の活性化を狙う。「自分らが楽しむからこそ参加者が楽しめる」と森沢良典理事長(44)。みんなが“ニタリ”と笑える策を届けたいという。
(谷川剛章)
次回の活動について打ち合わせする「トサシカケNITARI」メンバー(土佐市高岡町甲)
平野史恵さん、浜田明李さん
現代の自由を考える
自由民権運動が始まって150年の節目。運動を指導した板垣退助の生誕地に近い高知市の天神橋通商店街で10月12~20日、民権運動の歴史から現代の自由を考えるアートイベント「ボトムとサミット」が開かれる。
発案者は、県内で活動する若手芸術家の平野史恵さん(37)、浜田明李(みり)さん(32)。1882(明治15)年、政府の言論弾圧に抵抗して当時の高知新聞が行った「新聞の葬式」に関心を持ち、同市立自由民権記念館で講座を受講して知識を深め、企画を練った。
今回のイベントには2人を含む県内外の美術家ら計10人が参加し、商店街の空き店舗にアート作品を展示。「新聞の葬式」が行われた市中心街から五台山までの約4キロを歩く催しも予定している。
平野さんは「非言語の芸術表現を通して、当たり前になって忘れそうになっている自由や権利などについて感じ、考えてもらえる場にしたい」と話している。
(楠瀬慶太)
天神橋通商店街の商店主と打ち合わせする平野史恵さん=中央=と浜田明李さん=左(高知市本町3丁目)
別役昌彦さん
若手作家が絵金を表現
幕末の絵師、絵金こと弘瀬金蔵。2026年の没後150年に向け、現代の地元作家がそれぞれの中に潜む「絵金」的な部分を作品で表現する「エキンスタイル」と題した展覧会が23年から始まっている。
呼びかけたのは、絵金作品が多く残る香南市在住で、中央大学講師の別役昌彦さん。「絵金が現代にも通じるすごいアーティストだということを、県内若手作家を通して多くの人に知ってもらいたい」といの町や土佐市で同展を開催。作品は、絵金に見られる大胆な遠近法や非日常性、艶や奔放さなどを感じさせ、訪れた人を魅了した。
来年1月には香南市の絵金蔵で「エキンスタイルとは何か」展を開く。はらわたちゅん子、上村菜々子、深浦亜希、横山千春、鶴見さくら、島村悠といった気鋭の作家が参加を予定。別役さんは「(来年の)絵金蔵20周年、没後150年に役立てるようなイベントにしたい」と話している。
(早崎康之)
絵金作品の前で「作家の方たちが絵金をどのように表現するのか楽しみ」と話す絵金蔵の中西洸太朗学芸員(香南市赤岡町の絵金蔵)
高知こどもの図書館25周年記念事業実行委
バリアフリー本に学ぼう
高知こどもの図書館(高知市丸ノ内1丁目)で2025年3月、「世界のバリアフリー児童図書展」が開かれる。同図書館の開館25周年記念事業の一環。
同展は2年に1度、国際児童図書評議会(本部・スイス)が選んだ作品を集めて全国を巡回しており、23年に選ばれた22カ国・地域の計40点などを展示する。仕事としてクッキー作りに励む知的障害者の一日を記録した本のほか、ドアを開いたり、歯ブラシを外したりして楽しめる点字付きの仕掛け絵本などを紹介。アメリカやフランス、チリ、韓国など、さまざまなバリアフリーの取り組みが学べるという。
記念事業の実行委は同館職員やボランティアら20人。実行委員長で同館を運営するNPO法人の理事長、岡本富美さん(64)は「障害がある子どもも楽しめる本がある。ほかのバリアフリー図書も並べて、読書への希望が持てる展示にしたい」と語る。
(相良平蔵)
来年3月の展示に向けて準備を進める実行委員会のメンバー(高知市の高知こどもの図書館)
※文・写真とも高知新聞社提供