高知県内で芸術文化活動や福祉・教育活動などで活躍する個人・団体に対して、事業の金銭助成を行なっています。助成申請の受け付けは年2回。1月と7月の下旬、高知新聞紙面に募集広告を掲載します。申請書はこのホームページからダウンロードできます。また、当事業団でもお渡しできます。お問い合わせください。
芸術文化や厚生福祉を支援 金銭助成事業
2023年度秋の助成【8団体】
朝倉夜間中学校
学びを支えて四半世紀
午後5時過ぎ。高知市の朝倉第二小学校の校庭隅にある平屋に、不登校の生徒らが集まり始めた。朝倉夜間中が始まり今年で25周年。自分のペースで学ぶ人たちを支え続けている。
1998年に朝倉中のPTA有志が、病気のため学ぶ機会を得られなかった40代女性の「子どもの宿題を見るために勉強したい」との願いをかなえようと同小の施設で始めた。翌年には公設民営に。市教委は不登校でも夜間中に通えば出席扱いとし、学校のテストも受けられるようにした。
これまで700人以上が通い、今は市内外の子どもやお年寄りら24人。「高校に進んで鍼灸(しんきゅう)師になりたい」「子どもの質問に答えられるように」と願いはさまざまだ。
それぞれが高知大学生の支えで九九を勉強したり、おしゃべりをしたり。その姿に、代表の山下実さん(69)は「ここは止まり木。昼間の居場所に戻っていけるようフォローする場所」と話す。学びの灯はこれからもつながっていく。
(加藤風花)
不登校の児童生徒らが集う朝倉夜間中学校(高知市若草南町)
きょうされん高知支部
四国の共同作業所交流
障害のある人々が生きがいと誇りを持てる社会を―。全国の共同作業所が1977年に立ち上げた「きょうされん」。県内では94年に高知支部ができ、現在20事業所が加盟して啓発活動などを続けている。
今年11月11、12日には、新型コロナウイルス禍で2年中止していた「四国ブロック学習交流会」をいの町で開く。支部役員が会合を重ね、準備を進めているところだ。
世界的ベストセラーとなったデビッド・グレーバー著「ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論」を共訳した酒井隆史・大阪公立大教授が、コロナ下で浮き彫りになったケア労働の重要性などについて記念講演。ほかに障害者福祉を取り巻く現状の報告、コラージュ作品制作、利用者が夢や願いを語り合う分科会など盛りだくさんの内容になる予定だ。
山田隆支部長(70)は「たくさんの職員、利用者らと交流し、一緒に学びたい」と話し、組織外からの参加も広く募っている。
(松田さやか)
四国ブロック学習交流会に向けて準備するきょうされん高知支部の役員ら(高知市旭町3丁目のこうち男女共同参画センター「ソーレ」)
中・四国保育学生研究大会学生実行委員会
高知の魅力詰め込んで
将来の保育者としての資質向上を図る「中・四国保育学生研究大会」が今年12月に高知で開催される。実行委員を務めるのは高知学園短期大学の学生たちだ。
実行委執行部は幼児保育科の2年生9人。10月には保育士の採用活動が解禁されて忙しさが増す中、メンバー全員が自ら志願して執行部に入った。
中四国9県から四年制大学、短期大学が計36校参加する。各校の代表が保育や教育に関する研究や劇、ダンスなどを発表したり、他校の研究成果を見たりすることで保育士に必要な能力を高める貴重な機会になっている。
上岡彩乃実行委員長(20)は「研究大会に向けて生徒は一生懸命準備をしている。まずは他校と研究を学び合えるように円滑な運営をしたい」。9月13日には初めての会議が開かれ、交流イベントで方言クイズを開くことなどを話し合った。上岡委員長は「高知の魅力を詰め込んだ楽しく学びある大会にしたい」と意気込んでいる。
(相良平蔵)
中四国の保育学生研究大会の準備を進める実行委メンバー(高知市旭天神町の高知学園短期大学)
紙芝居「ビキニの海のねがい」を本にする会
「平和」を考える機会に
1954年に太平洋・ビキニ環礁で行われた米国の水爆実験で、県内の漁船員が被ばくした事実を、子どもたちにどう伝えるか。元教員ら11人でつくる「紙芝居『ビキニの海のねがい』を本にする会」は、4年前に製作された紙芝居を本にし、来年3月の発刊を目指して準備を進めている。
実験で海上に煙が上がる様子や汚染されたマグロを食べたりする船員の生活などを描いた紙芝居。一人一人が手に取りやすい形にし、「学校で教材として活用してもらいたい」とメンバーは期待を込める。
製本は、紙芝居製作グループの代表を務め、昨年亡くなった橋田早苗さん(香南市)の夢だったという。県美術家協会長で元小学校長の森本忠彦さん(83)による作画はそのままで、英訳や当時の補足説明などを追加。子どもから大人まで読める内容にこだわる。
西内義人事務局長(67)は「県内にも被害者がいることを知ってもらい、平和について考える機会にしてほしい」と話している。
(玉置萌恵)
資料を見ながら、本のデザインや文章を話し合うメンバー(高知市丸ノ内2丁目の高知城ホール)
小梅助産院
親子で学べる性教育を
開業助産師として、「小梅助産院」(高知市春野町南ケ丘5丁目)を営む谷泰子さん(55)と、「このは助産院」(同市一宮東町5丁目)を営む細川真利さん(53)。親子で参加できる体験型性教育講座を開こうと、「いのちのおはなしキャラバン隊! 土佐姉妹」を今年8月に結成した。
夏休み中に開いた初講座では、小学生前後の子どもと保護者を対象に、命の始まりや赤ちゃんが育つ様子を解説。人形を抱っこする体験が人気を博した。
参加者から「思春期の子どもに、性についてどう伝えたらいいか分からない」という悩みが寄せられたことを受け、12月に開く2回目の講座は大人に向かう体と心をテーマに。第2次性徴、性の多様性…。主に小学高学年から中学生ぐらいの親子が楽しく学べる内容にする予定だ。
谷さんと細川さんは「まず自分の体を大切にし、友達の体も大切にしよう、と思ってもらいたい。家でも親子で話をするきっかけになれば」と語る。
(松田さやか)
「成長の早さ、体形…。みな違っていていい、ということも伝えたい」と話す谷泰子さん=左=と細川真利さん(高知市知寄町2丁目のちより街テラス)
NPO法人「地域文化計画」
もう一人の「らんまん」
本県で小夏などが普及するきっかけをつくった田村利親(としちか)(1856~1934年)を顕彰する企画展を、NPO法人「地域文化計画」が12月に高知市で開く。小夏の学名(シトラス・タムラナ)にもなった柑橘(かんきつ)類研究家に、再び光を当てる。
田村は香美市出身で、牧野富太郎と同時代に生きた。2人は少年期から親交があり、田村について長年研究している元県農業技術職員、橋本博好さん(93)によると「専門分野は異なるが互いに尊敬し合う仲だった」。田村の研究の集大成となる「日本柑橘全誌」の出版に向けて、牧野が尽力したこともあるがかなわず、膨大な資料が東京大学やオーテピアなどに残されている。
今回、NPOメンバーが橋本さんの研究を知り企画展を計画。田村が残した柑橘の彩色画や、明治期に台湾で行った実地調査の記録も公開するという。
朝ドラ「らんまん」で盛り上がった本県。忘れられていた、もう一人の植物学者に注目だ。
(村瀬佐保)
田村利親を研究する橋本博好さん=中央=と「地域文化計画」メンバー(高知市追手筋2丁目のオーテピア)
かたしま~ず
人つなぐ地域ニュース
宿毛市片島地区の住民グループ「かたしま~ず」は、半世紀以上続く商店の紹介や祭りなどの行事、グルメ情報などをA4判両面2ページにまとめた「かたしま~ず・にゅ~す」を発行する。ニュースは30~50代の事務局メンバー7人が独自の視点から掘り起こし、地域の魅力を再発見。ポップなイラストも添え、読み手の興味を引き付けている。
現在は3カ月に1度ほどのペースで地区内外に約700部を配布。山下博美代表(52)は「ご近所の顔が見える関係が、さらに深まってほしい」と思いを語る。
さまざまな自粛が求められた新型コロナ禍。近所同士の関係が薄れていくのを肌で感じ、「人のつながり復活プロジェクト」を始める。今後、2017年から現在に至る計50号を冊子にするほか、電子化しホームページでも公開する。地域学習の教材としての活用も視野に入れる。
ニュース発行以外の活動も多彩。12月14日には大島小学校で、4年ぶりに星空観察会も開催する。
(坂本出)
次号の「かたしま~ず・にゅ~す」について話し合うメンバー(宿毛市片島のカフェ「eatriel」)
いしはらの里協議会
お寺で最高の生演奏を
2012年の発足以来、土佐町石原地区で「10年後も住み続けられる石原」を目指して、生活店舗やガソリンスタンド運営、旧小学校舎を生かした宿泊事業などに取り組む「いしはらの里協議会」。3年前からは地区にある地福寺を会場に「いしはら音楽祭」を開催し、評判を呼んでいる。
企画したのは、県職員で当時町役場に出向していた三木智史さん(30)。「地方は都会よりも文化や芸術に触れる機会が圧倒的に少ない。この差を少しでも縮めよう」と、プロの楽団などを招いた演奏会を提案。住民と会場を考える中で「敷居が低くてなじみ深い」お寺に行き着いた。
4回目の今年は、NHK交響楽団のメンバーが初登場。旧石原小学校体育館も会場に加え、重厚なクラシックはもちろん、誰もが知るアニメのテーマ曲なども演奏される予定だ。
近年は高知市など町外のリピーターも増えた。山下秀雄会長(75)は「秋の紅葉に囲まれ、最高の生演奏を体験してほしい」と話している。
(谷沢丈流)
11月4日に開催される「いしはら音楽祭」をPRする協議会のメンバー(土佐町西石原の石原コミュニティセンター)
※文・写真とも高知新聞社提供